平成15年度同窓会総会講演

「歯科インプラントの適応拡大をめざして」

〜齊藤 力教授の講演を聞いて〜

組織再建口腔外科学分野

大学院1年 大沢 大(33)

平成15419日の新潟大学歯学部同窓会総会学術講演会では、本学組織再建口腔外科学分野の齊藤力教授による「歯科インプラントの適応拡大をめざして」という講演が催されました。

 インプラント治療が日本へ導入されて20年あまりたち、現在ではインプラント治療は一般の人々に広く知られた治療法になっており、歯科の臨床では欠くことができない状況です。

しかし全ての状況下でそのまま適用できるわけではなく、状態によっては審美的問題が残存したり、適用自体困難な症例も存在します。今回は、少しでも条件の悪い患者さんにインプラントを適用するための工夫に関して、齊藤教授はそのご経験を軸に講演なされました。

 インプラント適用に際して骨不足、欠損が指摘される症例への対応として、骨移植、骨延長術、神経移動術、骨再生・形成術を挙げられ、各方法を行ったご経験をお話になり、そこから得られた成功法を示唆されました。さらにインプラント埋入後の環境をととのえるための口腔前庭拡張術、顎骨再建症例への応用、矯正治療への応用、顎矯正外科への応用にもふれられ、口腔機能、形態、再建や構築のための選択肢としてのインプラントの重要性を強調されました。

一方で、感染をはじめとした偶発症発生のリスクがインプラントには伴っています。この点に関しても症例を挙げられ、種々リスク軽減のための対処をお話になり聴衆の聞き入るところとなりました。

 20年前、生体に金属を埋め込むことに医局員が反対する中、誰かがやらなければという思いでインプラントの仕事を進んで行い、挑戦を続けた齊藤教授のご姿勢は、歯科医師として歩み始めた私にとって刺激となるものでありました。

近い将来組織工学的手法による治療が全盛になると予測されますが、適用症例の拡大がすすめられ、良い意味でその終着駅がなくなった人工の第3の歯、インプラントの果たすことのできる役割は今後とも重要であり、私たち若い歯科医師は学び続けていかなければならないと感じました。