平成16年度新潟大学歯学部同窓会・総会学術講演 
「顎顔面領域の超音波診断」
林 孝文 教授の講演
歯学部同窓会学術委員会 八巻正樹


平成16年度新潟大学歯学部同窓会・総会学術講演 は平成16年4月24日(土)に新潟大学歯学部講堂において開催されました。
林先生は1981年新潟大学歯学部入学(17期生),卒業後1987年に歯科放射線額教室に入局,2000年には臨床系では3人目の本学OBの顎顔面放射線学分野教授となり現在に至っています。
今回は先生の専門の一つである超音波を使用した顎顔面領域の診断についてのご講演でした。
 顎顔面領域の画像診断は、歯や骨が対象とされることが多いため、エックス線診断がもっぱら利用されています。それに対し,超音波診断は経済的でエックス線被曝が無く安全性の高い検査ということで全身的に多用されていますが、顎顔面領域は超音波診断には不利といわれてきました。
 しかし最近では機器の普及や高性能化、診断医の読影能力の向上により、次第に臨床的価値が認識されるようになってきて,現在では、唾液腺の腫瘤性病変や口腔癌の頸部リンパ節転移の診断に非常に高い有用性が認識されているとのことです.

 林教授は卒業時より超音波診断に興味があったため、当時超音波診断装置が導入されたばかりの歯科放射線学講座(現在の顎顔面放射線学分野)への入局を選択したそうです。
 講演は超音波画像診断装置の原理から始まり,日常臨床において最も頻繁に利用している頸部リンパ節の診断,軟組織・粘膜疾患の診断の症例を説明。
 また,特殊な応用例として超音波診断装置の特徴である非侵襲性を生かして行った学童の顎関節症の集団検診の結果では関節円板の転位は意外と多いが(約20%)無症状で可逆的であり長期的に経過を追うには超音波装置は有用であるなど、広く顎顔面領域の画像診断における利用法と今後の将来展望についても語られました。

 超音波診断の「視野が限定され、画像の再現性に乏しい」という欠点を克服し診断ができるようになるまでの林教授の苦労話とそのときに使用した診断装置の実演を交えて非常に興味深いご講演でした。